筆者は鯨や象などを撮影する中で、それらの動物と深く関わる人々が特有の雰囲気を持ち、その人々が鯨や象に対して畏敬の念を抱いていることに気づいています。人間は言語や技術を発展させて、環境を支配するような能力こそが知性であると考えています。でも、鯨や象と深く関わる人々は、人間とは異なる「受容的な知性」の存在に気づいています。
私は、人間が「受容的な知性」を持つためにはどうしたらいいのか考えないといけないと思いました。だいぶ前にテレビで見た象やカラスの話を紹介したいと思います。人間は、大切な人が亡くなってしまった場合、お別れはしますがそれで終わってしまいます。しかし、象やカラスは死んだ仲間を受け入れる行動が見られるそうです。
まず、象は仲間の象が死んだ場合にすごく反応を示します。たとえば、死んだ仲間の体に鼻や足で触れたり、優しく揺らしたりして、まるで「起きてほしい」というかのような動作をします。また、死んでしまった仲間の周りに集まり、何時間も、場合によっては数日間そばにいたり、ときどき低い鳴き声を出したりします。中1のときに勉強した「オツベルと象」でもそうでしたが、自分の家族や仲間に対して強く反応するのが象の特徴だと思いました。
次に、カラスです。カラスは象とは少し違います。カラスは死んだ仲間を発見すると、他のカラスを呼んで、みんなで集まることがあるそうです。これは「カラスの葬式」と呼ばれていて、カラスは「死」に対して他の動物とは少し違う関心を持っているようです。不思議なのは、道端で車にひかれて死んでしまったような他の動物の死体はつついて食べたりすることがあるのに、仲間の死体にはほとんど手を出さないことです。仲間のカラスに対しては、様子を観察するようです。これは、仲間のカラスが死んだことを重大なことだと考え、「ここは危険な場所ではないか」「天敵が潜んでいるのではないか」と仲間同士で情報を共有するために行っていると考えられています。そして、その情報を集めた他のカラスといっしょに特定の場所を怖がるようになります。
このようなことからわかるのは、象は仲間の死をちゃんと受け止めて、いたわるような行動をしています。また、カラスは仲間が死んだことを「学習する機会」ととらえて次の行動に生かしています。
私は、人間だけが「死」に対していろいろな感情を持ったりするのかなと思っていました。でも、動物は人間ほどいろいろなことがわかっているわけではないので、まだ起き上がるんじゃないかといつまでも見守ったり、そこから警戒行動につなげたりしています。人間は自然や他の動物を支配することばかり考えずに、他の動物たちから学べる生き方があると思います。これからの時代は、外国からたくさんの人が日本に来て、日本人が戸惑うこともたくさんあると思いますが、「ガイアの知性」で学んだことを活かしていきたいと思います。
Commentaires